元上場企業不動産開発マンのブログ

不動産業界 特に開発系のことについて、自分へのメモ、就活、投資に参考になればと思い、思うが儘に綴ります。

デベロッパーの事業多角化⑦【第11稿】

こんにちは。

 

再生可能エネルギー」の続きとして、事業会社(仲介会社やコンサルではなく)におけるそれぞれの発電施設毎の事業環境や特徴を書いていこうかと思います。

 

太陽光発電事業

前回書いたように、「売電価格の下落」が特徴的な発電方法です。

これから先、事業投資するとなると、⑴新規案件の事業化、もしくは⑵中古案件への投資になります。

現在の太陽光発電事業の中古案件への投資表面利回りは低いものでも、概ね10~15%ほどで取引されているものが相場になっています。

 

また、20年間で収益は得られる訳ですが、

・パネル老朽化による廃棄・取り換え問題

・固定買い取り期間終了後の売電問題

を見据える必要があります。

この点については、パネルの老朽化時期に合わせ、経産省による産廃ガイドライン補助金などの整備、電力取引の自由化に伴った電力取引が確立されてくるものと考えているのが多くの市場の見方です。

 

 「新規案件の事業化」については売電価格が下がっていますが、結論から書きますと、「売電価格が半額になってしまったが、施工費もその分下がっているので、事業としては成り立つ」というのがマーケットです。

ただし、造成費用が多額にかからない案件に限ります。

私の想定では、18円/kWになっても事業化は可能だと考えています。

 

しかし、太陽光発電事業の新規案件事業化においては、すんなり事業化できる案件は既に残っていません。今から事業化するとなると、大体の案件で下記の3つのうちいずれかの障壁がある場合が多いのが現実です。

⑴ 経産省の事業認定は取得済みだが、土地の一部の所有者が賛同していない案件が多すぎる。

発電所が急増したため、送電線・変電所の増築が必要になり、増築に伴う負担金が高すぎる上に、負担金の入金後3~5年待たされる(特に九州)。

⑶ 雪リスクや、降灰リスクなど、定期的に発電効率を低下させる自然現象が起きるエリア。

以上の障壁をコツコツぐいぐい乗り越えて事業化していく必要があると考えられます。

 

風力発電事業

風力発電は⑴陸上風力発電と⑵洋上風力発電があります。

陸上の場合は、ほぼ海岸線に近い地域での事業になります。

 

20kW以上の風力発電の固定買い取り価格が22円に対し、20kW未満(通称「小形風力)の発電機ですと売電価格が55円に設定されています。

また、19.8kWの発電機ですと土地込みで3,000万円~4,000万円の投資になるので、個人投資家向け小形風力市場は大変盛り上がっています。

 

しかし、当たり前ですが、「風が吹かないと発電しない」ので注意が必要です。大型風力への投資の場合では3~5年の風況試験を要して事業化しますが、小形風力投資の場合大した風況試験・調査をせずに投資するケースがあり、結果として期待していた発電量が見込めず、今後大きな問題となっていくことでしょう。

なお、大型風力事業も、「風が予定より吹かないため、収益が見込めない」という話がチラホラ聞こえてきますので、要注意です。

 

水力発電事業

私も好きな映画「黒部の太陽」でも舞台になった黒部ダムなどが、水力発電です。

近年では、田んぼ用の用水路などを利用した「小水力発電」が取り上げられていますが、田んぼ用の用水路などは自治体が管理しているため、自治体主導型の小水力発電が出てきています。

管理の問題があるので、現在のところ大きな話題はありません。

 

地熱発電事業

地熱発電を簡単に説明すると、地下5km~15kmのマグマの熱を利用して、蒸気を噴射し、その蒸気によってタービンを回す発電方法です。

それ故に、調査期間が他の発電方法に対して非常に長いです。

実際は、経済産業省などと密接に関わりながら、調査費用などを想定し、案件に携わることとなります。中々不動産会社が関われる案件ではありません。

不動産会社ではありませんが、金融業のオリックス八丈島地熱発電所の運営会社になりました。

(参考:http://yts.jp/article/d-415/

 

バイオマス発電事業

バイオマス発電を簡単に説明すると、「ゴミや、不要になった籾殻、豚や牛の糞を発行させたメタンガスなどを燃料に、燃やすことでタービンを回す発電方法」です。

バイオマス」というと少々難しい話に感じますが、火力発電がオイル・ガスを燃やしていることに対して、燃やすものが変わっただけです。

 

一般的には、「木質チップ」と呼ばれる、木をチップ状にしたものや、パームオイルなど東南アジアで大量生産できる自然燃料が使われるケースが多いです。

変わりものとして、牧場の横で糞から出るメタンガスや、芋焼酎工場で出る芋の残さなどがあります。

 

「太陽光バブルの次はバイオマスだ!!」と、不動産業者界隈は騒いでいるようですが、計画案件を事業化するためには、

⑴ 工場運営ノウハウ

⑵ 燃料調達の確実性

の2点が障壁となりますので、太陽光発電に比べると格段に難易度があがるため、簡単には事業化できないでしょう。

なお、経産省への申請は溢れているようですが、時期に計画倒れ案件は消滅させられると思われます。

 

 

長くなりましたが、以上が再生可能エネルギー事業の簡単な状況です。

 

まだいろいろ書きたいのですが、今回はこのあたりで終わります。