リーマンショックの次の試練 不動産開発業界【第4稿】
こんにちは。
マンション専業デベロッパーはリーマンショックを機に事業の多角化をしてきたわけですが、その多角化について書いていく前に、もう一つのマーケットのトレンドを書いていこうと思います。
それは、「建築費の上昇」です。
特に就活生などにありがちですが、「デベロッパーとゼネコンの違い」というのが分かりにくいようですので一応説明しておきます。
デベロッパーは土地を買い(借りるケースもある)、建てる建物(住宅orオフィスor商業)を決めます。そのあとの、建築設計~建築工事は外部委託します。設計は設計事務所、工事はゼネコン。といったところです。小さい建築だと、ゼネコンが設計したりするケースもあります。このように完全に役割分担して、開発事業は進みます。
ただ、時としてゼネコンがデベロッパー的機能も兼ね備えることもあります。
さて、以上の前提で話を進めます。
ゼネコンや設計事務所は、「建築設計・工事を取ってこないと仕事がない」ということですので、デベロッパーに出向いては仕事をいただき、デベロッパーに対して接待をし、どうしても仕事が取れない時は会社に利益が残らなくても安く工事を請け負ったりしていました。
つまり、100の工事を100のゼネコンで奪い合うので、安請負が続いていたという認識で大丈夫です。
その状況が一気に覆る出来事がありました。
2011年3月11日東日本大震災です。
東北の復興工事が急務となり、国、県などあらゆるところからゼネコンに声がかかりました。当然、ゼネコンは「社会的責任感」と「お金」のために東北の工事を請けます。
「もうマンションデベロッパーの工事なんて、安請負しないよ」という感じですね。
そして、東北の工事で生コンクリートや鉄骨鉄筋、H鋼、銅(電線に使う)などの需要が高まり、材料代も上がり、建築職人も引っ張りだこで、人件費も上がっていきました。大きいゼネコンほど、採用数を増やし、万全の準備をしています。
引用:http://suik.jp/report?code=A000000077
さらに、追い打ちをかけるように東京五輪の開催が決定しました。五輪開催に向け、目に見えるだけでも、スタジアムの工事、選手村、ホテル増加、インフラ工事、いろいろな工事が活況になり、建築費の上昇は加速しました。200の工事を100のゼネコンで分け合っているわけです。
どのくらい上がったか、というと、3LDK(70㎡)×100戸のマンションを作る場合の見積もりを例にしてみますと、
・2006年のマンション工事:12億円(約1200万円/戸)
・2015年のマンション工事:21億円(約2100万円/戸)
のような違いです。外壁やキッチンなどのスペック、ゼネコンの状況(1件/年はマンション工事を請けたいなど)、お付き合いの状況などにより、100万円単位で上下しますので、一概にはいえないですが、以上のような衝撃的な建築費上昇が起きました。
もちろん、ゼネコンは売り上げが上がり、好循環なのですが、デベロッパーのマンション事業に関しては『従来の価格で工事を請けてくれるゼネコンがいない』わけですので、事実上いままでのビジネスモデルは崩壊しました。
不幸中の幸い、生き残りのデベロッパーは預金残高を伸ばし、事業の多角化に向かっているので、より新規事業への期待が高まる機運となりました。
以上がここ10年間くらいのマーケットトレンドです。
このマーケットトレンドは建築・不動産業界に限った話ではないので、参考になればと思います。
本日は以上とします。